落ち穂拾い(ミレー作)の麦の種類は?背景や収穫時期は夏なのか作中から予想!

絵画

19世紀を代表するフランスの画家ミレーが描いた代表的な作品である「落ち穂拾い」

学校の歴史や美術の時間などで目にした方も多いことでしょう。

ところでこの「落ち穂拾い」、収穫が終わった後の畑で麦を拾っているのですが、育てていた麦は一体何の種類なのでしょうか?

今回はミレーの落ち穂拾いで拾っている麦の種類について、大きさや収穫時期から予想していこうと思います。

落ち穂拾いの麦は何の種類?

のどかな農村の一風景を描いた「落ち穂拾い」

社会情勢を風刺した作品として、当時の実態を知ることができる貴重な資料ともなっています。

この落ち穂拾いの作中で育てていた麦は、今世界中で育てられている麦と同じ種類なのでしょうか?

まずは麦の種類から確認しつつ、作中の状況から推理していくことにしましょう。

麦の種類は?

現在、麦の種類として大別した時、確認されているのはイネ科の麦とキビ亜科の麦の2種類になります。

このうち、食用として当時栽培されていたのはオオムギ属のオオムギ、コムギ属のパンコムギ・デュラムコムギ・スペルトコムギ・クラブコムギ、ライムギ属のライムギの6種類となっています。

ヨーロッパでは当時パンが主食であり、パンを作るために麦を栽培していました。

上記の種類の中で主にパンの製作に使用される麦の種類はパンコムギとライムギの2種類となっています。

作中の収穫時期はいつ?

ミレーの落ち穂拾いはすでに収穫が終わった後の畑に落ちた麦の穂を拾う作業を写しています。

そのため、麦の収穫が終わる時期を描いた作品となります。

上記で紹介した麦の収穫時期は夏~秋頃であることが多く、当時も同様の時期に収穫されていたことが予想されます。

 

しかし、作中の人物は全員長袖の服を着ており、真夏の炎天下で作業をする服装ではありません。

そのため、作中の麦の収穫時期は秋頃であることが考えられます。

ちなみに、秋に収穫をする種類の麦は春に蒔かないといけないそうです。

作中の大きさに近い種類の麦は?

次は、落ち穂拾いの作中で拾われている麦の大きさについてです。

一口に麦と言っても、上記のように種類が多く、それぞれ微妙にですが形も大きさも異なっています。

作中で描かれている麦の大きさを実物大の大きさに拡大してみましたが、作中では麦の粒というよりは藁を描いているような感じで、種類を特定するところにまでは至りませんでした。

しかしながら、これだけの広さの麦畑を一面刈り取った後の作業であることから、麦自体は比較的栽培しやすい種類のものであることがわかります。

麦の種類は春小麦!

 

以上のことから、ミレーの落ち穂拾いで拾われている麦の種類は春小麦であることがわかりました。

春に蒔いた種が秋を迎え、やっとのことで収穫をした麦ですが、刈り取りの際にどうしても穂が畑に落ちてしまい、すべてを採集することが難しいのが当時の課題でした。

収穫された麦の大部分は地主に取られてしまうことから、せっかく自分たちの手で育てた麦の穂を拾わないのはもったいないという農家の思いで、泥臭い作業を行っているというわけです。

作業をしている人の服装を見ても、段々と涼しくなってくる時期である秋だということが何となく分かるものとなっています。

ミレーの落ち穂拾いについて

ここまではミレーの落ち穂拾いの麦の種類について推理してきました。

では、そもそもなぜミレーはこの落ち穂拾いという作品を描いたのでしょうか?

麦を扱った背景は?

作品を描いた当時、ミレーは情勢が不安定だったパリやコレラの猛威から逃れるために、郊外にあるバルビゾン村へ他の芸術家たちとともに疎開していました。

農村で過ごしたミレーは麦畑を刈り取る様子を間近で見ており、貧しい人々が地に落ちた麦の穂を懸命にかき集めるその姿を見て、これまで住んでいた都会との貧富の差を描いたものとされています。

 

もともと、キリスト教の考えで地に落ちた麦の穂は貧しい農民が生きるために拾うことを許されたものであり、地主が麦を一粒も落とさずに刈り取ることを禁止していたということも、この絵の完成に関係するものとなっています。

ちなみに、ミレーの生まれ育った北ノルマンディー地方では大規模な麦の栽培が行われていなかったことから、バルビゾン村での麦の刈り入れにミレーが感動してできた作品とも言われています。

落ち穂拾いは夏バージョンもあった!?

この落ち穂拾いですが、実は夏の落ち穂拾いを描いた作品があることをご存知でしょうか?

今回取り上げた秋の収穫風景を描いた落ち穂拾いの前に、ミレーは「落穂拾い、夏」と題し、似たような作品を出展しています。

その内容は麦の収穫もままならない畑を同じように農婦がわずかな落ち穂を探して拾っていくというものとなっています。

しかしながら、出展当時は「貧しさを誇張している」「権力への抵抗を暗示している」など、ミレーが描きたかった意図とは別の意味合いで捉えられてしまい、正当な評価を得ることができなかったそうです。

関連する作品は?

上記の「落穂拾い、夏」に関連した作品として、ミレーは春夏秋冬を描いた3つの作品を同時に出展しています。

それは「葡萄畑にて、春」

「林檎の収穫、秋」「薪集め、冬」

の3つです。

農村で生きる人々が季節ごとに行わないといけない作業を描いています。

これを見ると、1つの作物だけでなく、多くの作物を育てていかないと生活が成り立たないということも浮き彫りになっていることがわかりますね。

終わりに

今回はミレーの落ち穂拾いで拾っている麦の種類についてお伝えしてきました。

今回お伝えした内容をまとめると以下のようになります。

  • 収穫時期等を考慮すると、春小麦である可能性が極めて高いです。
  • 春小麦は秋に収穫する麦です。
  • 落ち穂拾いは夏バージョンも存在しますが、評価はあまり良くなかったようです。

絵画の背景に着目すると、違った楽しみ方ができますね!


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